食農に興味ある方必見!誰でも出来る家庭菜園の有機栽培① 1月の土作り編

たいじゅの畑食農研究室です。

本日、嬉しい知らせがありました。お世話になっております納品先の園児さん達が、昨秋から育ててきた大根を収穫して大喜びだったそうです(写真を別添で添えて送っていただきました)

食農の醍醐味は食べ物に親しみを持って楽しんでもらう事にあると思います。どんなに栄養指導が上手であっても、不本意なものであれば継続しない、それはお互いにとって望ましい結果とはいえません。

さて、今回は土作りについてです。

有機栽培は難しい?はじめの一歩は土作り

読者の皆様の中にも、食に興味があって自分の食生活を改善するため、もしくは更に一歩進んで、社会活動として食育にアプローチしたいと考えておられる方もおられるかもしれません。

食育題材の決まりやルールといったものは特にないように思います。

私の子達が保育園でお世話になる過程で知り得た、もしくは自身の所属する農業コミュニティや仕事から得た情報では、どんな野菜でも①食育題材として相応しく(扱いやすい)、②乳幼児が触れて差し支えない(怪我しない)ものであれば何でもいいと言って良いでしょう。

それでもテーマとして、「無農薬である」とか「有機栽培である」とか、何かひとつオリジナリティを持たせると一段と食育の深みが増します。もちろん、SNSで話題の環境推進活動の理念に必ずしも沿っていなくても、「ご当地一級品のブランド」とか「今話題の極甘高糖度トマト!」とか、「世界で一番売れている儲けまくりの大成功の野菜」とか何でもいいと思います。ただ現在のところ、行政からの評価としては有機栽培や無農薬というのは非常にポジティブなイメージを持たれていますし、基本的には親御さんも良い印象を抱かれることが多いようです。私自身は無農薬や有機栽培というのは、圃場と私達の生活とのホメオスターシス(生物とヒトとのバランス)に寄与する重要な鍵だと思って有機栽培に取り組んでいます。何故か美味しいですし(もしかしたら親ばかなだけかも….笑)

食育に野菜生産者として携わるキーアイテムとして、有機農産物や無農薬農産物を作る技術があると、なにかと強みになると思います。

では、そんな有機農産物を果たして自分で作れるのか?というと、方法論さえしっかりと学習して実践すれば決してハードルの高い話ではありません。特に重要なのは一にも二にも土作りです。よく勘違いされるのですが、野菜作りで一番手間をかけるのは栽培期間に草花をいじったりすることではありません。それは寧ろ”やらない方が良いことリスト”を作った方がいいくらい放任主義のほうが野菜はすくすくと育ってゆきます。沢山実らせるには、要所要所で介入するテクニックがありますが、そこは本題ではないので割愛します。

この記事では、執筆時点では1月ですのでこの時期にオススメの土作りをご紹介してゆきたいと思います。

この記事では、理屈を一から説明するスタイルではなく、あくまで一つのレシピとして具体的な資材や手順を記載してゆきたいと思います。なぜその資材を選ぶのか、なぜその手順なのかについては煩雑にならない程度にはご紹介したいと思いますが、詳しくはまた各論で記事にしてゆきたいと思います。

土作りの基礎知識

有機栽培における土作りは、

  • 物理性
  • 生物性
  • 化学性

以上の3つを整えることから始めます。

「え…いきなり難しいやん」とドン引きにならないでくださいね。もう少し分かりやすく説明します。

植物と土の関係は、ヒトの身体の中(胃とか腸)と食べ物に似ています。人間だって、調子が悪いのにコッテコテのラーメンとか食べたら胃もたれして消化不良で下痢になったりしますよね。それと同じで、まずは胃腸環境にあたる「土中環境」を整えてあげないといけないのです。

1.物理性とは「土が粘土みたいにベットリしていない、フカフカの状態にしてあげる!」ということです。フカフカですと根が息できますし、根をどんどん伸ばしてゆくことも出来ますよね。

2.生物性とは「多様な生き物がいて土をフカフカ、栄養たっぷりにしてくれる」です。人間だって腸内細菌がいなくても何もかもが自力で消化できる訳ではありませんよね。それと同じで、土中生物が生態系豊かなことで、フカフカにする役目や病原菌が異常に増えにくい環境、肥料を食べやすいサイズにする役目、などサポートしてくれるわけです。土中に土と菌類と肥料、堆肥などがごっちゃになって作る塊を「腐植」と呼称したりします

3.化学性とは2.とも関わってくるのですが、腐植の存在で肥料が流れずキープしてくれる役割を果たします。

よく、慣行農業でも堆肥をたっぷり入れますよね。化学肥料だけで成長するなら不要なのでは?と思いがちですが、1~3の機能をしっかりと土に持たせるために、多くの慣行農家も堆肥を使います。

土作りの基本の流れ

土作りの意義は物理性、生物性、化学性をしっかりともたせることにある!とご紹介しました。

本章では、具体的な土作りの流れを追ってゆきたいと思います。

(1)まずは作りたい野菜を決める!

野菜には旬がありますので、今から作れる野菜の種類に絞って、その中でも何を作りたいのかを決めましょう。

1月からスタートですと、促成栽培で3月、通常4~6月に収穫となります。

  • ☆軟弱野菜(小松菜、ほうれんそう、水菜、こかぶ、ラディッシュ)
  • 大根、ブロッコリー
  • えんどうまめ
  • じゃがいも、☆にんじん
  • (☆)ねぎ

このあたりが作りやすいと思います。特にじゃがいもは作付適期にあたるので、相応しい時期と言えるでしょう。1月の厳冬期はそもそも気温の低さから野菜が育ちませんので、頑張ってビニールハウスやビニールトンネルで保温しながら栽培期間の短い軟弱野菜の3月下旬の収穫を目指す、というのがオーソドックスかと思います。

※ちなみに春野菜としてお馴染みの玉ねぎ、にんにく、そらまめなどは、越冬野菜といい遅くとも11月中には植えて若苗の状態で冬を越す、というのがスタンダードな手法です。えんどうまめなども本来はそうするのが好適とされていますが、できないことはありません。

☆のついたものは、保温があったほうがいい!というものです。ビニールトンネルをつかった保温については最後に軽く方法を書いておきますね。別記事に詳細を書きたいと思います。

(2)作付計画

作りたい野菜が決まったら、次に「作付計画」を作りましょう。

  • いつ
  • 何を(どんな野菜を)
  • どのくらいの間隔で(条間、株間といいます)
  • 施肥量
  • 被覆など資材の設置状況や間引きなどのメモ

などを計画または記録してゆくと良いでしょう。この作付計画&メモというのが、2年目以降の栽培に物凄く生きてきます。私はスマホやデジカメで写真を撮るだけの事も多いです。やりかたはなんでもいいので、必要な情報があとから引き出せるように準備しておくのがおすすめです。

まき時や間隔については野菜ごとに色んな情報があり、本記事に収まりきるものではありません。そこで参考にしていただきたいのが、種のコーナーに置いてある種袋の裏面を見て下さい。

種からスタートするのか、苗からスタートするのかにもよりますが、「トンネル」などと注記してあるものは温度を確保する事を優先して下さい。1月ですと、ほとんどのものが促成栽培になります(地域にもよります)条間、株間はひとまず栽培方法を参考にしてもらえればOKです。

(3)資材(肥料、堆肥)の購入

いよいよ資材の準備にとりかかります。有機栽培の目玉ですね。

  1. 米ぬか(コイン精米機で入手)
  2. 菜種絞りかす(ホームセンターで入手)
  3. 有機石灰(〃)
  4. 苦土石灰(〃)
  5. 薪灰や草木灰(調達先がなければヤフオク!や通販サイトで入手できるみたいです)
  6. バーク堆肥(ホームセンターで入手)

1~4は、1平米につき100gとします。5は1つかみ程度(1年に1回くらいでもオッケーです)、6は5リットルです。このレシピを基本形にして下さい。肥料食いの野菜(ブロッコリーやキャベツといった大型葉物)は1、2を100~150g追加するか、追肥(栽培期間の適当なタイミングで施肥)で対応します。ジャガイモも1、2を50gくらい足すといいです。

「いきなり全部決まってるんかい!」はい、とりあえず決めました。。

施肥のキーワードは「NPK」という、植物にとって最重要元素の設計が最初に来ます。なのでその設計からトライしてみるのもアリかと思います。今回は詳細を省かせていただきました。

とはいえ、菜種絞りかすは昨今の原材料価格高騰の影響でやや高値ですので、安価な畜糞でやりたいと思う方もおられることでしょう。その場合は、ケイフンがオススメです。ケイフンにするならば、1+2+5(米ぬか+油粕+草木灰)の代わりに、ケイフン150gの投入量が基本となります。

(4)畝整備と施肥

栽培区画はしっかりと雑草を抜いて、大きな石ころや残渣もおおむね取り除いておきましょう。

よくある質問で、土中に入れたら分解されるものをわざわざ畝から出す必要あるのかということなのですが、分解されるとはいえ非常に長期間をかけて堆肥になってゆくものです。またこれが重要なのですが、冒頭に物理性・生物性・化学性というお話をしましたが、化学性にとってよくないことなのです。

詳しくはC/N比で調べてみて下さい。

根張りを邪魔する、根菜であれば又根を誘発する大きな石ころはほぼ皆無の状態からスタートしたいところですね。まあ、私の場合はいっぺんには完了できなかったので野菜作りを進めながら徐々に減らしてゆく感じでしたね。

そして施肥量を計算した上で肥料と堆肥をまき、鍬(くわ)でよくすきこんでいきます。耕運機があれば作業が捗るでしょう。鍬(くわ)や鋤簾(じょれん)を使って土をふんわりと持ち上げ、1m幅のうねを完成させます。表面は平らにしておきましょう。

(5)待機期間

このあと土を最大1ヶ月放置します。

その必要性は何なのでしょうか。実はここが化成肥料を使った栽培とは大きく異なる点です。

先ほど投入した肥料(米ぬか、油粕)、これは生の肥料。つまり、まだ植物が吸収できる完全な肥料状態ではないのです。土中の放線菌などが分解することで肥料としての真価を発揮します。これにおよそ1ヶ月必要なのです。

また、その間に腐植の形成、発酵ガスなどの脱気、生物群の増加などが行われます。

まさに、何もしない待機期間こそが、土作りでもっとも忙しい時期でもあるのです

ですので、じっくりと、慌てずに待ちましょう。

・・といいたいところですが、、、、

厳冬下は微生物の発酵プロセスも鈍化するので、タイミングを伺っていたら肝心の野菜作りが始まるのが2月中旬となり、作付のタイミングを逸してしまいます。それでは本末転倒ですよね。

ということで今回は「えひめAI」を使った、ぼかし肥の事前の調製をオススメします。

微生物資材の改善を目指して、食べ物に含まれている乳酸菌や酵母、納豆菌、糖蜜を主体とする複合微生物を独自に開発し、食品メーカーの排水処理施設で実証試験を重ねた結果、「えひめAI-1」の開発に到りました。

https://www.ehime-iinet.or.jp/ai-1/profile/index.html

えひめAIの作り方は引用元をご参照ください↓

https://www.pref.ehime.jp/h30103/sangiken/alls/etc/documents/ai-2.pdf

えひめAIとは微生物資材の一種で、この希釈液で肥料を人工発酵させます。1Lにつきペットボトルのキャップ1杯の希釈液を作って、1(米ぬか)と2(油粕)を等量よく混ぜた所に少しずつ加え、ちょっと湿ってるかな?くらいの含水率になるように調製(手でギュッと握ると、形にはなるけどすぐ崩れるくらいがベストです)。嫌気性発酵なので厚手のビニール袋に入れてしっかりと空気を抜いて密封。2週間くらいでパンのような香ばしい匂いがしたら発酵肥料の完成です!

ぼかし肥料だと1平米あたり200gが基本です。これだと1~2週間で野菜の作付を開始することができます。

なお、発酵鶏糞の場合はすでに発酵しているので、少し寝かせて(生物性の確保)作付可能です。

冬場は保温をしっかりして、春先に収穫を楽しもう!

(1)~(5)を経て、有機栽培の野菜作りの準備が整いました。冬場の有機野菜づくりのポイントは、やはり保温です。ビニールトンネルをしっかりして全端部を盛り土で固定します(強い北風対策でもあります)。

(↑2023年3月中旬頃に収穫した小蕪「あやめ雪」)

ビニールトンネルで覆わなくても出来る野菜もあるのですが、軟弱野菜や人参といった主力系は必須アイテムとなります。それをしないと収穫期がどんどんと遅れてしまい、4月に生育期間がもつれ込むと品種によっては薹立ち(花芽が出てきて本来喫食する部位がまずくなってしまう)してしまいます。

1月中旬からでも、充分間に合います!

写真の小蕪「あやめ雪」は、昨年1月25日に播種をしました。2024年も土作りはこれからです(ぼかし肥の仕込みを2024年1月11日に行いました。)

土作りと種袋の裏面にある栽培手順、保温を行っていれば、ちゃんと綺麗な野菜を作る事ができます。いまからでも遅くないので、ご家庭、職場でもトライしてみて下さいね!!

最後までお読みいただき、誠に有難うございました。

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