【解説】ナズナ(ペンペン草)の栄養ー野草の世界

  • 2024年1月16日
  • 野草

1月7日、人日の節句の朝には七草を入れたおかゆを食べる風習が残っています。

春の七草といえばご存じ芹、ナズナ、ゴギョウ(オギョウ)、ハコベラ、すずな、すずしろ、ホトケノザ(コオニタビラコ)の7つですね。邪気や病を振り払うおまじないのように言われたりしますが、実学的には宴を楽しんで胃が疲れた頃合いに健胃をもたらす薬膳を振る舞うというのが良く言われる事です。

ところがこの人日の節句、旧暦なんですよね….。新暦の1月7日に探そうと思うと、芹もちっこいし、ゴギョウはこれまたちっこいし、ハコベラはロゼッタになってて判別が難しい。ホトケノザはとにかく見つけにくい。

その中でも「ナズナ」は物凄く見つけやすいんです。ぺんぺん草ですし、草丈もそこそこあり(勿論新芽のほうが美味しいので探すのですが、古い株の傍でGETしやすいので苦労が少ない)言う事ないです。

ペンペン草の味、香り

ところで、なずなって単独で食べた事ありますか?

七草に入っているので、野草に全く興味がなくても1年に1回食べている方が多いはずなんですが「ナズナの味」とか言われると困ってしまいますね。

  • アクが多少ありますが軽く湯がけば薄い春菊のような味わい
  • 香りは牛蒡やキクイモを薄くしたものを思わせる独特なもの
  • 見た目は青菜です。
  • 食感は少しパリパリ感に欠けますが普通のお浸し風です。

といった具合に、香りの面で少し好き嫌いが分かれそうですが、まともに食べられる代物です。

ナズナの栄養的側面

「でも雑草なんて栄養ないんでしょ?」

そういったお声が、あちこちから聞こえてくる心境です(笑)

芹やすずな、すずしろは栽培品目としても食べられているから栄養的なイメージがつきやすいのですが、栄養士である私も雑草の栄養までは把握できとらんかったですし、調べても出てこないんじゃないかと思っていましたが、栄養士のバイブルである「日本食品標準成分表 2020年版 八訂」にはきちんと記載されていました。

実は食用の野草というのは今でこそ雑草扱いされがちですが、それほど時を遡らずとも庶民の食生活に密接に関わるものでした。よく食べられているものは掲載を目指すというのが食品成分表のモットーですから、その名残で色々と面白い食品が掲載されているのです。私は食品成分表が好きでしょっちゅう閲覧していますが、もしお持ちの方で機会があれば気になる食べ物を検索してみると新たな発見があるかもしれません。

具体的な成分は下記の通りです(参考まで)

さて、表頭項目すべてを網羅すると訳が分からなくなるので、主要な項目をみてゆきましょう。

1.ビタミン群(特に抗酸化ビタミン)

(1)ビタミンA・・・430μg(レチノール活性等量として) 緑黄色野菜です

 ⇒イメージとしては春菊よりも多く、バジルやパセリよりも少ないといったところでしょうか。 

(3)ビタミンC・・・110mg

 ⇒総量だけで見ると、代表的なかんきつ類(レモンやミカンなど)よりも多いです。野菜にはかんきつを超える豊富なビタミンCを含む野菜は多いのですが、その中でも優秀な部類です。野菜の中でも豊富と言えるでしょう。ブロッコリー並に含んでいます。成人の推奨量が1日100mgと定められていますから、可食部100gで原理的には満たす事が可能です(実際には水溶性ビタミンなので茹で湯にいくぶんか流れていきます)

(3)葉酸・・・180μg

 ⇒葉酸は造血や細胞分裂に関わる重要な栄養素です。

 葉酸の含有量としてはかなり高めで、ブロッコリーでも140μgです。ただ、葉物野菜を100g摂るのは実際には大変なので、総合的に鑑みてトップクラスとは言えませんが、それでも栄養学的な効果は期待大でしょう。

2.ミネラル

カルシウム、鉄分を豊富に含んでいます。野菜の中でもトップクラスの勢いです。

この2つの成分、実は日本人にとってとても大切とされています。現代日本の食生活において特に不足しがちとされる栄養素なのです。これらは積極的に摂取を心がけましょうとされています。現代人にとってはスーパーフードと呼べる存在かもしれません。

                                       

3.摂取において注意すべき点

ナズナには腎臓結石の原因になるシュウ酸が含まれていますので、残念ながら大量摂取には向いていません。あくまで諸栄養素の補足的な役割にとどめるべきかと思います。

また、元々は生薬に利用されていたそうで薬効が期待出来るそうですが、妊婦の方は子宮収縮の作用があると言われており摂取は控えるべきとされています。

ナズナ料理

若い葉を摘んでよく汚れを落しお浸しにすることが多いようですが、その他にも軽く湯通しして味噌汁の具にし、溶き卵を落して卵とじ味噌汁にすると美味しいです。卵黄の油分が脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE)の吸収効率を高めます。お味噌汁だと水溶性ビタミンのビタミンCも効率よく摂取できますね。

天麩羅にしても、炒め物の具材にしても美味しいと思います。

先にも触れましたが、シュウ酸の過剰摂取にならないように楽しんで下さい。

ナズナの旬

ナズナは厳冬下でもある程度の樹勢を保ち冬を越すたくましい植物ですが、野草の多くとおなじで春先の若葉が美味しいです。晩秋も、夏に育ちきった少し固いものもあるかもしれませんが柔らかい葉もまた出てきますので選別すれば美味しく頂けると思います。

おわりに

現代では”雑草”と同じ括りにされ食卓から排除されてしまいましたが、古来より日本では野草に親しみ利用してきました。現在野原に見られる野草のうち、少なくない種類が食用もしくは薬用として渡来してきたものでもあるのです。

その栄養価はナズナで見てきたように優れている事が多いです。特に現代人に不足しがちなビタミン、ミネラル類を豊富に含んでいます(野草の過食は禁物!)

春になればつくし、ナズナ、カラスノエンドウ、たんぽぽ、ヤブカンゾウ、野蒜、イタドリ、芹…

夏にはイヌビユ、スベリヒユ、アカザ、山には山野草の類い(ウワバミソウなど)…

秋には様々な木々の実りが得られます。

冬は七草探しに、タラの芽、蕗の薹などを詰む香りが春を待ち遠しくさせます。

古来より医食同源、庶民も貴族も野草によって身体の調子を整えてきました。それは栄養だけでなく、香りや目を駆使したセラピーの一種だったように思えます。難しいことはさておき、まずは野草に親しみを込めて五感で味わい楽しむことを体験しては如何でしょうか。

お読み頂き、ありがとうございました。

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