生野菜が生食NGの場合があるのは何故?カット野菜のリスクについて考えてみる。

  • 2024年1月18日
  • 栄養学

たいじゅの畑食農研究室です。

最近、飲食店で食中毒のニュースが連日報道されています。もはや毎冬話題に上るテーマですが、食中毒のテーマってどこかで勉強したかな?と振り返ってみると、あまり機会ないですよね。

お仕事で飲食に携わることになっても、自分が食品衛生責任者出ない限りは、既存のマニュアルに従うだけでその意味まで深くは考えないことでしょう。家庭に関しては口伝継承に近い状況ではないかと思います。

家庭での食中毒予防って意外とぼんやりしたテーマだなと思います。

そこで具体例として去年2023年によく見掛けた「農産物直売所での野菜の切り売り」について食品衛生の考え方に基づいて課題をピックアップしていきたいと思います。

異常気象の影響で増えだした野菜のカット

数年前まで見掛けなかったように思うのですが、最近農産物直売所に行くとカット野菜が増えてきたな~と思っています。特に多いのがかぼちゃ、大根ですね。大根に関しては去年の夏に高温と雨不足の影響で一大産地である北海道で不作となったため、秋口にかけて高値になっているのが影響したと思われます。

今まで一本売りしていた農家さんも価格高騰や型落ちが沢山でてしまった故に加工場の設営と営業許可を取って切り売りを始めたのかなと想像しています。中には、ぶつ切り大根の姿も。。。

(↑両端をカットして販売されていました。最近では包装資材もなく、3~4分割して山盛りにしている光景も目にするようになりました)

野菜のカット売りに許可がいる理由

どこまで世間で認知されているのか分かりませんが、野菜を切って売るのは保健所の許可が必要です。これは食品衛生法が根拠となっています。営業許可にあたって事業者が要請されるものは、衛生的に加工できる空間設備と、食品衛生の知識を持っている責任者の2つの存在です。どんな加工品を作るのかによって設備や加工場の設計の複雑さが変わってくるのですが、野菜を切るだけならば滅茶苦茶ハードルが高いわけではありません。とはいえ、最低限水回りに関してはきちんと分けていないと駄目でしょうから、ご自宅で切って売りたいたいからといって簡単に許可が下りるものではありません。

なんで素人がカットして売ったらアカンの?というと、紛れもなくカット面が食中毒菌等の侵入経路だからですね。そこで悪性の細菌が繁殖してしまうというシナリオは充分に考えられます。

考えられる食中毒の可能性

「野菜なんて滅多に汚染されてないし、ハズレても多少お腹が痛くなるだけでしょ!」と舐めたらあきません。中には後遺症を含む重篤なケースもあります。

では、どういった可能性があるのかみていきましょう。

  • 黄色ブドウ球菌・・・手指の化膿した傷に多い。代表的なのがおにぎり。素手で触り繁殖すると数時間後に食中毒を引き起こす。
  • 大腸菌、大腸菌群、サルモネラ菌・・・畑の有機資材(堆肥)や野生の動物経由(井戸水、自然の河川)、手洗い所(感染した人等の飛沫感染、接触感染)
  • ボツリヌス菌、リステリア菌・・・(通常稀だと思いますが)包丁の使い回し(肉⇒野菜)や洗浄不足
  • O-157、ノロウイルス・・・接触感染、飛沫感染(ヒトヒト感染)

まだまだあると思いますが、代表例を挙げました。

感染予防するにはまず「加熱」です。加熱さえすれば大抵の細菌、カビ類は死にます。

ウェルシュ菌やセレウス菌などは耐熱性の芽胞を形成し加熱でも失活しなくなってしまいます。調べたところウェルシュ菌は土壌や下水にいる菌らしいのですが、通常は大量調理されたカレーなどで報告事例が多く通称「給食病」などと呼ばれていますね。

ウェルシュ菌などが問題となるのは、「大鍋で作ったカレー」という、大きな塊ぜんぶが培地になって、とんでもない細菌数になる可能性があるからですね。野菜の端面が多少汚染されても、そこまで悲惨な事態になるかというと、まあ何ともいえませんが、給食病ほどではないでしょうね。

なお大量調理マニュアルの記載では、細菌類の死滅には中心温度75℃で1分間の加熱、ノロウイルスの場合だと中心温度85~90℃で90秒以上とされています(芽胞除く)。中心温度ですから、お湯をかける、お湯に漬ける、だけでは不十分ですのでご注意ください。

一番いいのは、根菜であれば外皮を全部取り除けばほぼほぼ危険部位の除去は完了といった所でしょう。

気を付けたいのがサラダですね。

産直のカット大根を見て思ったのが、大根って加熱調理だけじゃなく大根おろしにもするし千切りにしてサラダで食べたりもしますよね

大根であれば外皮を全部取り除けますから対策しやすいですね。※リーフレタスやサニーレタス、ベビーリーフなどは給食の場合、規定濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬させます。原則、生食するものは全部消毒するのです。

野菜及び果物を加熱せずに供する場合には、別添2に従い、流水(食品製造用水注
1として用いるもの。以下同じ。)で十分洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウ
ム等で殺菌注2した後、流水で十分すすぎ洗いを行うこと。

大量調理施設衛生管理マニュアル
( 平 成 9 年 3 月 2 4 日 付 け 衛 食 第 8 5 号 別 添 )
( 最 終 改正 : 平成 28 年 1 0 月 6 日 付け 生食発 1 0 0 6 第 1 号)

※「食品製造用水」というのは、飲用水のことです。

免疫の維持のためには無菌状態もいけませんので過剰な対策は不要ですが、よく未就学児のお子さんにサラダであっても生食は控える施設が多いのは、こういった事情があるということを認識して頂ければなと思います。

ちなみにサラダの生食については食中毒事例が幾つもあって、高齢者が死亡する例もありました。(ちなみにこのときの原因菌は腸管出血性大腸菌O-157でした)

農産物直売所では”サラダミックス”や”レタス”など沢山売られています。これらが必ずしも不衛生だとは申し上げません。しかしどういった方法で生産されようとも、一般論として食中毒菌の汚染がありうること、そして非加熱、消毒未実施での死亡事例が存在することは申し上げておきたいと思います。健康な成人であれば何の問題もないかもしれませんが、食育や免疫の不十分な高齢者や子供に与える際のリスクはリスクとして正しく把握しておく必要があると考えます。

水耕栽培の野菜やカット野菜(消毒済み)であれば、そういったリスクは低減されますね。小さなお子さんが生食をトライする第一段階としては安全性は比較的高いと言えます。

【余談】ノロウイルスは怖い

余談ですが、ノロウイルスってなんであれほど神経質な対策が取られるかご存じでしょうか?

ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」というくくりで、これはエタノール消毒が効きにくい性質を持っています。某ウイルスの時、どこでもアルコール消毒が推奨されていましたが、あの某ウイルスは「エンベロープウイルス」といってアルコールに触れるとたちまち死んでしまうウイルスだったから有効だったのです。なんでもかんでも効くわけじゃないというのがちょっとショックですよね。

さて消毒が効きにくい以上に衝撃なのが、その繁殖力です。感染経路は接触感染と言われていますが、ノロウイルス感染者の糞便や吐瀉物1gあたり100万個のウイルスがいるとされているのに対し、被暴露者には100個程度のウイルスが侵入しさえすれば、発症するとされています。

私が栄養士養成課程で校外実習に行った総合病院の方が「2020年の某ウイルスは、ノロウイルスの感染対策が徹底されていれば防げるもの」とおっしゃっていました。それくらい感染力が凄まじくて衛生施設では戦々恐々としているわけです。

まあそういったごく微量でも感染を広げてしまう病原菌ウイルスもあるので、感染の疑いがあるときは特に、衛生管理にご注意ください。

  • 次亜塩素酸ナトリウム水溶液による食器具等や野菜そのものの浸漬
  • ニトリルグローブの着用とこまめな手洗い
  • マスク等物理的防具
  • 体調管理のチェック(ウイルス検査含む)

ここまですればノロウイルスは防げるとされています。あとは先述の加熱条件の徹底ですね。

まとめ

昨今の農産物直売所事情をみて、少し気に留めておきたいと思い記事を書きました。冒頭にも申しましたが衛生施設以外ではまだまだ食中毒の恐ろしさが充分に広まっていないように思います。

何度も出てくる某ウイルスで騒然となった最初の年、私は大阪市内に住んでいたのですが、あちこちでお弁当が露店販売されていました。中には刺身定食も。。。真夏の暑い時期にです。苦しい状況だった故かもしれませんが、パンデミック真っ盛りの時に売り手も買い手も食中毒の知識が不足している現状がありありと見て取れたのが少しショックだったのが記憶に新しいです。

食中毒は単にお腹が痛くなるだけではなく、後遺症も引き起こしてしまう怖いものもあります。

今回はリスクといって良いのか微妙ですがカット野菜について分析をしてみました。家庭での安全対策にはどういったことが考えられるのか?という視点で書いたつもりですので、何かのご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、有難うございました。

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