筆者が実際に携わった保育園での食育事例12選!

  • 2024年1月16日
  • 食育

たいじゅの畑食農研究室です。

お正月も明けて新年が本格始動しましたね。保育園にお子様を通わせている親御さんも冬本番の寒さが逆風となり、お布団にしがみつく我が子をなんとか朝の準備に悪戦苦闘と毎日大変ですよね。本当にお疲れ様です。

保育園または幼稚園を実際利用されている方はご存じかも知れませんが、クリスマス会までは何やかんやと体験型学習が豊富にあるのですが、1~3月にかけては卒園の準備もあることや、そもそも野外活動を控える傾向にあることから少し落着きます。正月、節分、桃の節句といった伝統行事にフォーカスした行事食体験などが食育の一環として振る舞われることが多いようですね。

食育栄養インストラクターの私自身、日本各地の保育園でどのような実施をされているのか事例を是非知りたいところなのですが(ご存じであればぜひ教えて下さいっ!)、今回は読者の皆様にご紹介する形で、1~12月の食育題材を列挙していきたいと思います。

食育テーマ12選(目次)

  1. 【1月】野菜スタンプ(だいこん、にんじん、れんこん、ごぼうなど)
  2. 【1月】大根の収穫体験
  3. 【1月】浅漬けづくり
  4. 【4月】スナップエンドウ、実エンドウの下処理体験
  5. 【5~6月】カレーライス
  6. 【7月】とうもろこしの皮むき
  7. 【8~9月】夏野菜(なす、きゅうり、ミニトマト)の栽培、精霊馬づくり
  8. 【8~9月】いろいろなかぼちゃとの触れ合い
  9. 【8~9月】かぼちゃきんとん作り
  10. 【8~9月】無農薬の和栗を使った栗ご飯
  11. 【11月】さつまいもスイーツ
  12. 【12月】ブロッコリーを添えた行楽弁当

1月:【人日の節句】野菜スタンプ、大根の収穫

1月7日は人日の節句。この日は人間の身体を大切にする日として七草のおかゆが振る舞われますね。七草を子供達と探すのも一興ですが、旧暦ならいざしらず、新暦の1月7日に野草コンプリートを狙うのは中々骨が折れるものです。葉物はどうしても好き嫌いがあり、苦手イメージを増幅させてしまっては元も子もありません。

私が携わったものは以下の通りです。

  • 野菜スタンプ(大根、にんじん、れんこん、ごぼうなど)
  • 自ら栽培した大根の収穫体験
  • 大根の浅漬け

「野菜スタンプ」は、野菜の断面の色んな凹凸を利用して画用紙にスタンプしていく事ですね。普段馴染みのある野菜の断面模様が見られます。

私は数年前にカラフルにんじんを納品して「人参にも色んな色のものがあるんだ」とアピールしたことがあります。大根も緑色の大根、赤い大根、断面の綺麗なサラダ大根「紫師舞」「紅しぐれ」….色々ありますうよね。「だいこんはしろ!」と答えるのが正解なのかな?という視点も幼い頃に経験することが大切ですね。

アントシアニンを含む紫大根は、お酢でつけると赤く変色します。その色合いの変化を楽しむのもよいかもしれませんね。

2月、3月は筆者の実績がないのですが、この月はバレンタインデーや桃の節句(おひな祭り)があり、食育イベントとしては盛りだくさんですね。筆者は過去に梅の花つきの枝を差し上げた事があります。この梅は自宅の庭のものですが、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と申しますように、選定がてら少し手折ってあげるのは悪い事ではありません。今後、事例が出てくれば随時ご紹介させていただきますね。

4月:スナップエンドウ、実エンドウの下処理体験

春うららの季節は、畑は入れ替え時で軽い端境期となります。そんな中、旬を迎えるのがエンドウマメですね。エンドウには、莢も実も食べるサクサクとした甘い「スナップエンドウ」、実を食べる「実エンドウ」、莢を食べる「サヤエンドウ」と大まかに3系統あります。

こちらのエンドウ類、いずれも”筋取り”という作業が必要です。これを園児さん達が担当するというわけです。私が過去に納品したのはスナップエンドウと実エンドウ。

大人と違って子供達は筋取りも楽しい遊び。保育士さんへの聞き取りでは、スナップエンドウは少し難しくて(莢が柔らかいですからね)、実えんどうのほうが筋取りも楽で、その後に「パカッ!」と割れて中のマメを取り出す作業がたまらない様子だそうです。。

夢中になれる作業が何よりですね。いずれもおやつや給食で喫食できますので、園児さん達の食の幅も広がるかもしれません。私の居住地域では「うすいエンドウ」というなにわ伝統品種の栽培が盛んで、当農園でもうすいエンドウの栽培をしています(実エンドウというのはうすいエンドウのことでした)。食育活動を通じて地域の特産品を知ってもらう貴重な機会でもありますね。

この時期に合わせてエンドウ豆を栽培することも園庭が広ければあり得る話だし、実際にそうしている園もあると聞いた事があるのですが、花壇が限られていると玉ねぎの栽培とバッティングするようです。

温暖な4月は近くの公園に遠足におもむき、ピクニック弁当を広げてお昼ご飯を食べる事もあるようです。このときにブロッコリーを納められたらなぁと考えたりしています。

5~6月:【端午の節句】カレーライス🍛

初夏を感じる5月以降は、露地といえば越冬野菜の収穫シーズンです。にんにくや玉ねぎ、人参、早ければじゃがいもが採れる時期です(逆にいうと、それ以外の収穫物が落ち込む時期でもあります)

子供の日ですのでちまきや柏餅が振る舞われることもあるのでしょうか。どちらも誤嚥などのリスクがあるので少なくとも0~2歳児さん達は残念ながらありつくことは難しいかもしれません。

そんな中、収穫物を眺めて想像することはありませんか?

そう、大人気のカレーライス!🍛

この時期はにんじん、たまねぎ、じゃがいもと、カレーライスの材料が旬の食材として集結するのです。ですので私も食育題材として納品しました。にんじん、じゃがいもはピーラーで皮むき体験が出来ますね。行事食ではありませんが、自らも調理に携わった経験が大好きなカレーライスをひときわ美味しくさせるのに一役買いますね。また、人参の苦手な子は克服するチャンスかもしれません。

まだ実績はありませんが、2024年厳冬期にじゃがいも栽培をトライしてみたいと思っています。見慣れたじゃがいもも、じゃがいものお花や、ストロンの先に肥大したジャガイモが出来ることを初めて知るきっかけになるかもしれません。ジャガイモは茎、実に毒があるので、その点は要注意ですね。食育参加できたら改めてご紹介させていただきます。

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7月:【七夕の節句】とうもろこしの皮剥き

初夏といえど最近は梅雨の様子が安定しないですね。昨年2023年は7月になった途端、酷暑で倒れてしまいそう。畑は水不足が深刻でした。子供達もお外遊びを控えざるを得ないですよね。

さてそんな農業に限らず先読みの難しい時代ですが、この時期のオススメはなんと言ってもとうもろこしです。甘くて美味しいとうもろこしは子供達の一番人気ですね。

無農薬有機栽培でとうもろこしを作るというのは本当に難しいです。難易度が高い要因はいくつかあるのですが、最も深刻なのが虫害です。アワノメイガという蛾の幼虫が雄雌の両方の穂先から侵入して、果実を食い荒らすのです。とうもろこしの先端と根元、侵入経路が両方であることから農薬を使用しない防除が困難とされています。

この有機栽培のとうもろこし作りについては別記事に譲るとしまして、収穫タイミングが7~8月初旬となります。農薬は通常、出穂(しゅっすい)する時期に2度散布する事が多いようです(雄穂⇒雌穂)

果実は出穂から20日前後で収穫となりますから、残留農薬を気にされる方は少し気になるかもしれません。もちろん、生産団体の管轄下において農薬のガイドラインを遵守して初めて出荷できるものですので、安全基準(ADI)を満たしていると考えて差し支えないと言えます。実際に食育題材として慣行農家さんのとうもろこしを使う場合は多々ありますからね。

とはいえ、ADIというのは「一日”摂取”許容量」というように果実を摂取した場合の身体への作用ですので、散布箇所である穂先を小さいお子さんが丹念に触れるというのがいいのか悪いのか、私には何とも言えないです(もし研究結果があればご教示下さい)

無農薬の推しどころの一つは、そういった懸念が一切ないことですね。まあまあ自信をもって、自然のあるがままの姿で堪能していただけます。

(↑2023年7月の食育題材や一般販売した「しあわせコーン」)

「たいじゅの畑の無農薬とうもろこしの作り方」で、ある程度は綺麗なトウモロコシが作られることは実績としてあるのですが、年ごとに難易度が変わってくるのが難点です。また、完全にアワノメイガ(虫)を選別除去出来るのかというと、絶対という事はありません(私の納入先の保育園では、一匹だけ混入していた蛾を園児さんと一緒に飼ってみたそうです)

アワノメイガって結構大きくて苦手な人は苦手なんですよね….。また、虫の混入というのは産直業界では大きなミスとして扱われてしまうケースが多いので、通常は農家さん自ら剥いてしまう。剥けば混入しているかどうかはほぼ判別出来ます。それでなくても、写真のように一片だけ剥いても概ねの状況が分かります。私の場合は次のような事前の許諾を得ました。

  • 無農薬とうもろこしの虫害をゼロにする方法はなく、全部剥くことしか確実に除く方法がないこと(剥いていない=虫の混入はゼロではない)
  • 食育題材として穂先は残しておく場合でも一部開いて混入の可能性を少しでも減らすこと

その上でOKとなれば受注します。まあ基本的には小難しい話にはならず、虫がいたら仕方ない!無農薬だし!とうなずいてくださるお客様でしたので何とか出荷実績を得ましたが、そうでなければ難しいところかもしれませんね。アワノメイガの食痕は果実の皮や穂先に外観異常として出ますので、それほどトラブルが頻発するという印象はありません。ペットとして飼われてしまったケースも過去5年間で1度で1本だけでした。

有機農産物生産者としてはいかに綺麗な個体を安定して生産するかに注力するところかなと思います。

穂先と外皮を丁寧にとって調理師さん(栄養士さん)に渡す、という作業が、園児たちのおもしろポイントなようで、さらに食べたらめちゃくちゃ甘くて美味しかったという嬉しい評判を頂きます。「やってよかった!またやりたい!」食育No.1は間違いナシですね。

8~9月:【お盆、秋分】精霊馬、かぼちゃきんとん、栗

お盆は長期休暇に入ることが多いですね。野菜にまつわるお盆の行事といえば、精霊馬を飾ることでしょうか。栽培テーマとして茄子を選択される施設の方もあるようで、うってつけではありますね。

真夏~晩夏にかけては初夏に採れたかぼちゃが甘みを増してきます。食欲の秋も到来間近。

この時期に私が携わった食育テーマは以下の通りです。

  • 茄子、胡瓜、トマト栽培(栽培補助。6月下旬~採れ始めます)
  • 色々なかぼちゃの触れあい体験。
  • かぼちゃきんとん作りのお手伝いとおやつ。
  • 無農薬の和栗でつくった栗ごはん

【テーマ①】夏野菜(なす、きゅうり、ミニトマト)の栽培補助

食育テーマに野菜栽培を選択する施設は多いと思いますが、夏野菜は少し知識がいります。私の納入先は都会のビル群にあり日照の問題が大きな課題でした。また、胡瓜に関してはうどんこ病が発生したらどうすればよいのかとか、茄子の側枝はどうすればよいのかとか、毎回ご相談を頂いていた次第です。

プランター栽培ですと茄子の着果不良などが目立ち、中々難しいなぁと思いました。日照、多肥性、いろいろ要因はあると思います。その点トマトは高原性の野菜なのでうまく果実になりやすい印象でしたね。胡瓜も、摘果摘芯とうどんこ病の拡散を予防することで、果実を得ることは出来ました。

やはり収穫の喜びがあってこその食育、堅実なテーマとしてはミニトマト、胡瓜あたりが良さそうですね。

腕に自信があって茄子をすれば、精霊馬が作れたり色々と面白いと思います。収穫物でも可能ですね。

【テーマ②】いろいろなかぼちゃの触れあい体験、かぼちゃきんとん作り

(↑左上:えびすかぼちゃ、右上:飛騨かぼちゃ、左下:バターナッツかぼちゃ、右下:白爵かぼちゃ)

「野菜の形っていろいろあるんだよ」シリーズです。かぼちゃって本当に色んな種類がありますよね。

かぼちゃは表面がつるつるしていて刺さりにくいのですが重さだけが難点ですね。怪我をしないように、ヘタの部分は丁寧にとるか、ヤスリなどで丸めておきます。触れあい体験の際は落下衝突にご注意下さい。

よく追熟したかぼちゃは甘く、かぼちゃきんちゃくも素材の味だけでいけます。蒸して潰したかぼちゃを、サランラップに取り分けて絞るだけで簡単に作れますので、食べて作って美味しい食育の優等生ですね。

【テーマ③】無農薬の和栗を使った栗ご飯

私の自宅にはたまたま栗の木がありますので、これを栗ご飯にして秋の味覚を楽しんでもらっています。和栗を提供する際の注意点は以下の通りです。

  • 落下した栗はなるべく早くイガから出して虫食い穴がないことを確認したのち、野菜室で保湿しながら保管する(常温で急速に劣化します!
  • 萎縮した栗は除去する。まるまるとした栗、押してみてペコペコしない実がしっかり充実したものを選ぶ。

生栗は鮮度が命ですので、収穫から出荷まではしっかりと冷蔵してくださいね。

10~11月:【重陽の節句、新嘗の儀式】さつまいも

秋も本格化し、実りの季節を迎えます。農や食にとっては、一年で最もにぎやかな時期にあたりますね。気候も穏やかで過ごしやすく、食欲も増して園児達も元気いっぱい。

さつまいもは収穫後、2~3週間の追熟期間を経て甘くなります。その頃を目処に食育提案してみましょう。おおむね毎年11月初旬に実施されるケースが多かったです。

話は変わりますが(地域にもよりますが)ちょうど稲刈りのシーズン。籾が沢山出ますので、ロケットストーブ形式で焼き芋をすると、じっくり遠赤外線効果で甘い焼き芋が出来ます。稲刈りの際、稲穂をいくつか持って行ってあげると、いつも食べているごはんの姿が楽しめますね。

11~12月:遠足(ブロッコリーの入ったお弁当)

11月は遠足シーズンです。行楽弁当を持参して地域のイチオシのテーマパークに連れていかれる保育園も多いですね。そこでブルーシートを広げて皆で頂くお弁当の具材に、冬の到来を告げる野菜をふんだんに添えてみるのも良いかも知れません。

ブロッコリーは花蕾(からい、花のつぼみのこと)を食べるアブラナ科大型野菜です。収穫時期によって早生(10~11月)、中生(11月下旬~12月)、晩生(1月~)と分かれます。

早生の品種は私の農場ではピクセルという品種を試しました。8月中に育苗、9月初旬には定植して10月下旬から収穫が始まるのですが、このとき虫害に要注意。表から見えなくても、裏返してよ~く観察して、大きなヨトウムシやモンシロチョウの幼虫がいないかチェックして下さいね(結構います)。入り組んだブロッコリーから虫を取り除く際は、逆作用ピンセットがオススメです。

このブロッコリー、房分けをしますのでそれを園児さん達がトライした事も過去にあるようです。

ブロッコリーは葉酸やビタミンC豊富なので、ぜひ食育を通じて親しんで貰って、食べる事にも挑戦していただきたいですね。

まとめ 「食育の可能性は無限大♪」

本記事では、筆者が実際に携わってきた食育を個別に具体的に紹介してゆきました。

現在進行形で食育への関わりは続いていますし、今後も面白い食育テーマを開拓してアプローチしていきたいと考えています。また随時ご紹介出来ればと思います。

最後までお読みいただき、有難うございました。

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